第16回 総会・研究大会


【プログラム】

日程:2014年6月22日(日)

会場:日本女子大学 目白キャンパス 百年館 低層棟7階 701教室(アクセス、キャンパス・マップ

〒112-8681 東京都文京区目白台二丁目8番1号


11:30~

受 付

12:10~12:30

総 会

12:45~16:00

研究発表 (発表30分、質疑応答15分)

16:15~18:00

シンポジウム

18:30~

懇親会



【研究発表 要旨】

戦前期女子高等教育修了後の進路分化要因

―― 日本女子大学校の社会的機能に着目して ――

藤村 朝子

高等教育修了後の女子の進路について歴史的変遷をたどると、明治期まで遡ることができる。明治30年代、女子高等教育は次第に普及し始めるが、主として私立の専門学校がこれを担当していた。この流れを受けて創設された女子専門学校には、家庭婦人としてすぐれた良妻賢母となるべき女性を養成するための教養系の教育機関と、教員およびさまざまな職業人を養成するための職業系の教育機関とが別々に存在していた。

しかし、教養系、職業系のいずれにせよ、当時高等教育に進学できた女子の数は極めて少数であり、修了後の進路状況について数量的に把握できるようになるのは、女子高等教育進学拡大期としての大正から昭和初期を待たなければならない。

本発表では、この時期を女子高等教育の第1拡大期と位置づけ、当時の進路分化要因について、高等教育機関の社会的機能という観点から検討する。


19世紀フランスにおける女性詩人の活動とその社会的役割

―― デボルド=ヴァルモールの寓話詩の分析をとおして ――

岡部 杏子

19世紀フランスを代表する女性詩人マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモールは、エレジーやロマンスなどの恋愛詩の書き手として現在までその名を残している。このような詩人像が形成された背景には、同時代や後世の文学者が彼女の恋愛詩を大きく取り上げ、そこから「永遠に女性なるもの」と呼ばれる理想の女性像を見出したことにある。

だが、彼らの評価のなかには恋愛詩のみを対象としていては解消できない疑問が含まれている。それは「賢母」というデボルド=ヴァルモールのイメージである。これを最も明確に示しているのは、ヴェルレーヌによる評論『呪われた詩人たち』で挙げられている子どもを題材とした4つの詩篇である。彼はこれらの詩篇を引くにあたり、デボルド=ヴァルモールが、ラ・フォンテーヌやフロリアンに匹敵する寓話詩の書き手であると賞賛している。つまり、彼はデボルド=ヴァルモールの母性を寓話詩から読み取っているのである。それでは、優れた寓話詩の書き手であることと良き母親というイメージにはいかなる関連があるのだろうか。母親と寓話詩とは、当時の歴史的・文化的な文脈のなかでどのように関連づけられるのだろうか。そこで本発表では、デボルド=ヴァルモールの「賢母」というイメージの源泉を明らかにすることを目的とし、彼女の寓話詩の分析をおこなう。それをつうじて、当時の寓話詩が担っていた社会的・文化的機能についてのひとつの解釈を提示する。


会津恵日寺と徳一菩薩

永山 由里恵

徳一(得一・徳溢)は、伝教大師最澄や弘法大師空海と同時代に生き、交流を持った僧侶である。徳一に関する史料は少なく、不明な点が多いが、南都において仏教を学び、後に東国へと向かい、人々に仏教を広めたと伝わる。現在の茨城県や福島県には、徳一によって開かれたという寺院が多く残り、徳一が「徳一菩薩」と呼ばれていることからも、活動の跡がうかがわれる。

その中の一つが、福島県耶麻郡磐梯町にある恵日寺(慧日寺)である。恵日寺は、徳一菩薩を開基とする寺院の中でも史料上に登場することが多く、古くは『今昔物語』にもその名が見える。しかしその一方で、『陸奥国会津耶麻郡大寺恵日寺略縁起』をはじめとして、縁起や風土記においては、弘法大師の開基とされる。このように弘法大師開基を説きつつ、徳一菩薩に縁を持つ寺院は恵日寺に限らない。ではなぜ、開基に関してこのような並説がなされるのであろうか。本報告では、「徳一の里」として親しまれる磐梯町の、恵日寺を対象に、『恵日寺略縁起』を発端とした考察を試みたい。


人工社会(artisoc)をつかったシンボル創発の実験

大沢 秀介

パースの記号哲学に関しては、従来、記号論的研究と哲学的研究が行なわれてきた。しかしながら近年、科学哲学の分野で統計・確率現象への興味が再興し、その記号哲学が新しい視点から注目されはじめた。

そこで本研究では、人工社会研究ソフトウエアを具体的には、市販の人工社会ソフトウェアartisocを使って、パースのセミオシス(記号過程)をシミュレーションする基礎的モデルをつくり、パースの基礎的な記号分類のうち、2種類の記号の区別ができることを目指した。



【シンポジウム】

石川修一会員追悼:観光学の可能性 ―― 文化財と経済 ――

石川先生の観光学の一側面についての考察

パネリスト :: 江口 善章(兵庫県立大学)

石川修一・角村正博共著「コンペティティブ・アイデンティティーの観点からのヘリテージ・ツーリズム関連施設の立地に関する研究に向けて」(総合社会科学研究、第3集2号(通巻22号)、2010年3月、pp.27--41)について、その一つの解釈を提示する。


宗教的・文化的ヘリテージの観光財化をめぐって

―― 石川修一・角村正博2010「コンペティティブ・アイデンティティの視点からのヘリテージ・ツーリズム関連施設の立地に関する研究に向けて」『総合社会科学研究』(総合社会科学会22,27-41.)への宗教学からの応答 ――

パネリスト :: 小林 紀由(日本大学)

宗教共同体、またこれとかかわりを有する地域共同体が、とりわけ市場のグローバル化の過程で、みずからの有する宗教財、文化財(この発表では「宗教的・文化的ヘリテージ」と総称する)を観光財として市場化すること、すなわちそれらに市場的価値を付与することは宗教共同体・地域共同体の市場参加のひとつの手段と認め得るが、そのプロセスにおいて、宗教共同体・地域共同体がみずからホストとして、プロデューサー(生産者:観光関連業者や自治体)、ゲスト(消費者:観光者)とともにこれにかかわり、場合によってはプロデューサー、ゲストの動向に抵抗するなどする中で、新しい価値を創造する。この発表においてはそういった市場における民主的プロセスのもとに、宗教的・文化的へリテージの観光財化・市場化がすすめられることの重要性を主張する。




第16回総会

2014年6月22日 於 日本女子大学







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