第4回総会・研究大会

【プログラム】

日程:2002年6月2日(日)

会場:日本大学文理学部本館1F会議室B
〒156-8550 世田谷区桜上水 3-25-40

12:00~ 受付 
12:30~12:50 総会
13:00~14:50 研究発表 (発表30分、質疑応答10分)
14:35~17:15 特別報告:都市への回帰 (発表40分、質疑応答10分)
18:00~20:00 懇親会 レストラン「Panache」

研究発表および特別講演要旨

記号空間における仮想的実在について
江川 晃
ハウスマン(C. R. Hausman) のパース解釈によるならば、実在は進化しなければならない。この「進化的実在論」からすると、パース哲学に本質的にあるとされてきた矛盾、すなわち観念論と実在論という対立は無意味なものとなる。そもそも実在は、無限に続くある探究系列のなかで現れてくる一つの収束であり、それは探究を導いていくところの理想的限界でもある。しかし、別の探究系列が生じた場合、そのことに付随して姿を現す新たな実在がありうるのである。それでは、ここでいう別の探究系列とは、いったいどのようなシステムによって発生可能となるのであろうか。その為には、記号過程の発展について深く洞察しなければならない。そこで、今回の発表においては「記号空間」(semiotic space)と呼ばれるある種の「認識の場」を想定して、探究系列の変化とそこに必然的に生じる仮想的実在について考えていきたい。

 

森田療法とモンテッソーリメソッド ― 教育という視点において ―
織田孝正
今、教育において、自発性・主体性ということがいわれている。こうした問題を東西のすぐれた思想および方法をもとに考えてみたい。 一つは日本の森田療法である。もともと神経症の治療から出発したものであり、森田正馬博士(1874~1938)によって考案された独創的治療法である。それは東洋的思想に基づいた人格の陶冶といった側面があり、科学的再教育といってよいものである。
  一方、モンテッソーリメソッドは、イタリアの女医で教育家であるモンテッソーリ氏(1870~1952)による障害児研究と教育の中から考え出されたものである。子供の自由や自発性を重んじた教育法は、世界の新教育運動へと発展していった。 そして後者は前者の治療方法の確立に大きな影響があったと考えられる。そこで本発表では、こうした両者の関係を思想的に歴史的に考察してみたい。

 

夢幻都市パリとパサージュ
― 『感情教育』における遊歩・夢想・ファンタスマゴリーの主題 ―
尾河直哉
  ベンヤミンは『パサージュ論』で十九世紀のパリを遊歩者、夢想、魔術幻灯というキイワードで特徴づけている。フロベールの小説『感情教育』にもこれらの特徴が如実に現れている。主人公フレデリック・モローはしばしば「無為」の「倦怠」から「遊歩」に誘われ、いたるところで「夢想」に耽っており、それもしばしば「幻覚」に至るほどの強い「夢想」だからである。だが、一致はこれにとどまらない。パリが至るところで「壁」として描写され、まるでその「壁」に映像が投射されるように「夢想」が現れるシステムは、まさに魔術幻灯そのもののシステムとも言えるからである。そこにはディオラマに、そしてやがてやってくる映画に通じる感性が瑞々しく表現されている。

 

旅行行動に関する経済分析のミクロ的基礎
― 旅行の消費者行動の理論 ―
石川修一
旅行行動に関する経済分析で、良い分析結果を得ることができない理由として、実証分析に合うようなデータを得ることができないのでと言うことが聞かれる。これは、他の経済分析対象についても同様にあることである。旅行行動の経済分析が、他の分析対象と比較して良い分析を得ることができない原因は、ミクロ経済理論の整備が未だ決して十分でなく、マクロ経済理論に基づき集計量を用いた分析結果を、背景にあるミクロ経済理論的な意味付けや解釈が他の分野までに水準には達していないことにあると考えられる。したがって、本研究の目指すところは、旅行行動を経済分析するためのミクロ的基礎理論の整備に資する1つの試みをすることにある。その際、アロンゾの付け値関数の考え方が大きな役割を果たす。

 

都市社会の時間意識
八田隆司
コンピュータ、インターネット、高速道路、リニアモーターカ、24時間開設空港、コンビニエンスストアー、レトルト食品、ファーストフード、為替相場。これらはいずれも今日の日常生活に頻繁に登場する現代用語である。これらは一見すると全く無関係のようにみえるが、しかしそこには現代社会を貫く共通のキーワードがある。それは時間の商品化、産業化である。この発表では、現代の都市化された社会の根底にある時間意識が、生産性の時間意識と結びついていることを明らかにしながら、この時間意識の問題点を現代の幸福観との関わりで問題にする。その際、以下の論点に従いながら、この問題を検討したいと思っている。①古代・中世の農耕社会の時間意識と比較において、現代の時間意識の特徴とは何か。②今日の「時は金なり」、「金が金を産む」論理と「欲望の肥大化」はどのように関わっているのか。③死生観の変化の中で現代の幸福観をどのように考えるべきか。

第4回総会

2002年6月2日 於日本大学文理学部 

議題

Ⅰ審議事項
①2001年度決算について
②2002年度予算について
③2003年度大会開催校について
④その他

Ⅱ報告事項
①『総合社会科学研究』第2集4号の発行について
②その他


inserted by FC2 system