第6回総会・研究大会

【プログラム】

日程:2004年6月20日(日)

会場:日本女子大学 百年館5F 504会議室
〒112-8681 文京区目白台2-8-1

12:00~ 受付 
12:30~12:50 総会 
13:00~16:05 研究発表 (発表30分、質疑応答10分)
16:00~17:00 特別講演 (講演40分、質疑応答10分)
17:20~20:00 懇親会 レストラン「Shark(シャーク)」

研究発表および特別講演要旨

アニメーションを鑑賞する
杉野太一
アニメーションという表現方法に注目が集まってずいぶん経つが、未だにサブカルチャーの域を脱していないように思われる。文学、芸術を論じるのとは教養の程度でそもそも差があるということだ。だが、論文書きにもコンピューターを用いる現在、その恩恵を最も色濃く受けるメディアについて軽視するのは勿体無いことである。
そこで、アニメーションという表現方法を紐解くために、アニメーションが主に扱うことになるフィクションの鑑賞の仕方について考察し、それを入り口としてアニメーションを鑑賞することについて論じたい。
また、アニメーションとマンガの表現の差異について検討することで、かつて同一視されたこの二つの表現方法が如何に変容してきたかを明確にし、アニメーションの特色を導く。虚構を表現する手段についてのアニメーション、マンガらの見せ方を細分することで、アニメーション表現、アニメーション作品ついて、文化的重厚さをもって受け入れられる要素が見つかればと思う。

 

W. von フンボルトの大学論について
― 新人文主義学徒の位置付けを踏まえて ―
八木浩雄
W. von フンボルト(Karl Wilhelm Freiherr von Humboldt:1767-1835)は、ナポレオンに席捲されたプロイセンにて、僅か1年と数ヶ月の間、宗教=教育局長官の職責につき、同国の教育改革に努めた。その教育改革の一つであるベルリン大学の創設にあたっては、同大学の理念的構築に大きな影響を与えている。そのフンボルトの大学論は、メモ書き程度の草稿段階ではあるにもかかわらず、ベルリン大学を総合大学として構築させる意図が明らかにされた書として評価されている。
  本研究では、そうしたフンボルトの特に新人文主義学徒としての思想的背景に注目し、彼の大学論に見られる「新人文主義」的なものを明らかにしてゆきたいと考えている。研究にあたっては、新人文主義のフンボルトに至るまでの思想史の整理と、フンボルトの大学論に見られる彼の視点を比較してゆくことに、焦点を絞りたいと思う。
  今日のように教育学としての体系がまだ朧気だった時代、人間学とでも換言できるような視点で「教育」を捉えていた新人文主義思想とフンボルトの大学論は、「教育」を考える先人の教えとして多分な示唆を含むものだと考えている。

 

弱者の宇宙史   ― 宇宙史、弱者の正義 ―
安中隆徳
  BCE60Cころから中東文化が始まるというが、神の子孫である王という支配者側の宇宙史が多いなかで、初めてゾロアスター主義が弱者側の宇宙史を語った、という問題をテーマにしたい。
  ゾロアスター主義は善神・悪神を語り、天地創造や終末、目的、復活、最後の審判などを語ったが、ある対象を「悪」と決めつけること自体が憎しみ(主観的)だから、それには怨恨という性格も窺えそうだ。背景に、騎馬人部族による農耕部族への襲撃がくり返された数世紀があって、ゾロアスターは農民を「善」として、「悪」なる騎馬部族とその悪神が絶滅され、正義が実現される、とした。しかし現実の時間では、敵部族は絶滅されないで、一部がインドに侵入して支配者バラモン層になったというから、その宇宙史は願望にすぎない面があったようだ。
  ゾロアスターの宇宙史は後世に一定の影響力をもった様子なのだが、聖書を編集していたバビロン捕囚期のユダヤ思想では、他への怨恨よりも、独立を失った自己の不正義への悔恨(つまり「罪」意識)が強い様子で、過去を再吟味して造った「正義」に閉じこもり、将来を願う閉じた傾向も生んだようだ。
  「復活」も、正義を将来に持ち越こす点で、現世での敗北を甘受している。報復感情を満足させて終わっている傾向もある。現世での正義実現が大事だという現世主義から見れば、疑問も残る。宇宙史は信仰内容なのだが、相当に主観的な時間の取り扱いでもあり、歴史的・批判的な吟味も可能なようであって、その問題を部分的に考えてみたい。

 

新しい観光開発政策の可能性
石川修一
従来の観光開発政策は、地方経済の活性化を主目的としたものであった。事実、一大観光産業に関連する諸施設や社会基盤整備によって、雇用を創出することを通じて、様々な地域における厚生を高めてきたことは明らかである。しかし、その一方で、地域の伝統的な景観や自然景観などを損なうことが多かった。このことに対する反省に立ち、地域固有の美しさや魅力を住民自らが主役になり発見し高め、来訪者を迎え交流することを促進する新しい観光開発政策へと転換しつつある。この新しい観光開発政策が日本において成功するための鍵を、本発表では考察する。

 

特別講演

ポストモダン時代の「世界文学」の研究
ソーントン不破直子
要旨は当日大会受付にて配布の予定。

第6回総会

2004年6月20日 於日本女子大学 

議題

Ⅰ審議事項
①2003年度決算について
②2004年度予算について
③2005年度大会開催校について
④その他

Ⅱ報告事項
①『総合社会科学研究』第2集6号の発行について
②その他


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