第10回総会・研究大会

【プログラム】

日程:2008年6月29日(日)

会場:早稲田大学早稲田キャンパス 26号館(大隈記念タワー)502教室
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1

12:20~ 受付 
12:40~13:00 総会 
13:10~16:35 研究発表 (発表30分、質疑応答15分)
16:40~17:45 特別講演 (講演50分、質疑応答15分)
18:00~20:00 懇親会 「欧風料理キッチン ATTON」

研究発表および特別講演要旨

未成年犯罪者にたいする教育的処遇について
―小河滋次郎の感化教育論を中心として ―
板橋政裕
小河滋次郎(1863-1925)は刑事政策家として、内務・司法省時代に一貫して監獄行政に携わった人物である。また、行政官として法制の整備に尽力するかたわら、万国監獄会議への出席、欧州への視察や留学経験によって欧米の感化教育論を受容したことにより、未成年者にたいしては従来の応報的刑罰ではなく、教育的処遇をとることによって矯正を促すという体系的な感化教育論をまとめあげたことでも知られている。
未成年者の処遇については様々な見解が存在していたが、本研究では小河の感化教育論を中心に検証していくこととする。日本の監獄創成期において、およそ20年間にわたり行政の中核を担うとともに、感化事業についての代表的論者でもあった小河の感化教育論の整理と、その形成過程に着目して検討を進めることにより、未成年者を刑罰の対象としてではなく、教育・保護の対象としてとらえるという思潮がいかにして導入されたかという史的側面を明らかにしていきたいと考えたからである。

人工物における技術者の「安全」と消費者の「安心」
紙谷 豊
 私たちは多くの人工物に囲まれ豊かな生活を満喫しているが、この人工物が「安全」で「安心」を当たり前としてきた日常生活を脅かしている。本発表では、まず、家電商品等の人工物の安全問題は技術に内在するリスクによるものではなく、消費者の主観的な「安心」意識と技術者の客観的な「安全」意識とのギャップから生じるものであることを明らかにする。そして、人工物の持つ社会的、経営的、技術的な側面の境界部で発生するこのギャップは、その設計過程や使用段階で技術者や消費者が判断し管理する中で発生する人為的な問題であることを指摘する。技術者にとりリスクの予知・回避による「安全」の確立とともに、情報開示による消費者の「安心」確保が大きな責務になっているが、技術者からの一方的な情報提供だけでは消費者の「安心」とのギャップを埋まらない。消費者にとっての「安心」は自らが自立し、技術者との双方向コミュニケーションによる相互理解によって生み出される両者の信頼関係が構築され、初めて、能動的に安全な生活が得られることを提示する。

観光の聖地言説について
―伊勢神宮をめぐって ―
小林紀由
  巡礼と称される聖地への旅も今日では観光と密接な関係にある。しかし、そのような聖地巡礼の観光化は、ただちに巡礼のあるいは聖地の非宗教化を意味するものではない。観光化はむしろ新たな宗教性を創出しており、その宗教性の生産者はもはや宗教集団ではなく観光関連業者である。観光化時代における聖地への旅は、宗教性の生産・流通が宗教集団の独占するところではなくなる、という意味における世俗化の中に置かれていると言えよう。
  本報告においては今日の伊勢神宮をめぐる信仰の立場に立つ言説(それはしばしば共同体や国家を重視する)と、観光推進の立場に立つ言説(個人的祈願、心のいやしなど、いわゆる私生活化した宗教性を重視する)とを比較することにより、観光の聖地言説の特徴を抽出し、観光化時代における宗教性の生産・流通にかかわる観光関連業者の役割を明らかにしたい。

ヘリティージ・マーケティングとツーリズムについて
石川修一
  ヘリティージをヘリティージ・マーケティングでは、つぎのように捉えている。ヘリティージとはある種のグループのアイデンティティーを表すものであるとしている。そして、人種、宗教、民族、社会的マイノリティー、性別、趣味嗜好などなの歴史・文化・伝統を踏まえたマーケティングの重要性を指摘している。
 このような観点から、遺跡とは地域の重要なヘリティージの一つである捉える。遺跡に関連する施設を維持しサービスを提供することは、地域的なものである点から、地域のアイデンティティーを醸成し地域に自信とまとまりをもたらす可能性がある。このことは「地域自らが地域に誇りをもち、地域の魅力を再生・発見・高める」と言う日本の観光立国政策の主旨の一つに合致していると考えられる。本発表ではこのことについて論じる。

特別講演

アメリカ大陸におけるクレオール空間の形成
立花英裕
  今日のアメリカ地域に残されたフランス語圏は極めて限定されている。カリブ海域島嶼部の幾つかの島々,南アメリカ北端のフランス領ギアナ,合衆国ルイジアナ州,カナダ・ケベック州などなど...しかし,これらの一見脈絡もなく散在する,切れ切れの地域は,かつてはフランスの植民地として連続的な空間を形成していた。本講演では,この広大な植民地がどのように形成され,そして解体していったのかを,幾人かの興味深い歴史上の人物を通して振り返ってみる。特に,北米のケベック,ルイジアナを中心に据えたい。カリブ海域フランス語圏は,グリッサンやシャモワゾーらのクレオール文学の紹介で日本でも比較的知られるようになったが,どちらかと言えばマルチニク島に関心が限定される傾向がある。しかし,アメリカのフランス語圏地域をより広い視野に置くならば,なにが見えてくるだろうか。そこから,クレオールをめぐる考察の今日的射程を探ってみたい。

第10回総会

2008年6月29日 於 早稲田大学

議題

Ⅰ審議事項
①2007年度決算について
②2008年度予算について
③2009年度大会開催校について
④その他

Ⅱ報告事項
①『総合社会科学研究』第2集10号の発行について 
②その他


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