第24回 総会・研究大会


【プログラム】

日 程:2022年6月26日(日)

開催校:日本大学 商学部

〒157-8570 東京都世田谷区砧5-2-1

開催方式:対面・オンライン併用(同時開催)

※ 当日の入構をスムーズにするために、対面で参加される場合は、事前に(6/22, 水までに)事務局までお申し込みください。その際、お名前とご所属をお知らせください。

※ Zoomでの参加を希望される会員の方は、総合社会科学会事務局から会員宛メーリングリストに送付されるZoomのURLとパスコードをご利用ください。


12:00~

受 付

12:30~12:50

総会

13:00~15:40

研究発表(発表30分、質疑応答15分)

13:00~13:45

新潟市秋葉区における住民幸福度調査のプロセスと結果

 

および活用

 

金子洋二(大正大学)司会:臼木悦生(大正大学)

13:50~14:35

石川三四郎の古代東洋史研究をめぐって

 

貞清裕介(明星大学)司会:高頭直樹(兵庫県立大学)

14:35~14:45

休 憩(10分)

14:45~15:30

なぜ今、ディズニーは「母と娘」なのか

 

:『リトル・マーメイド』の続編を中心に考える

 

清水友理(日本女子大学)司会:関未玲(立教大学)

15:30~15:40

休 憩(10分)

15:40~16:50

特別講演

 

生まれる前に死んだ子どもの行方

 

―ドイツ民間伝承のフィールドから誕生死について考える

 

嶋内博愛(武蔵大学)

 

司会:奥香織(明治大学)



【研究発表 要旨】


(司会:臼木悦生)

新潟市秋葉区における住民幸福度調査のプロセスと結果および活用

金子洋二(大正大学)

秋葉区は、新潟市に8つある行政区のひとつであり、2005年に旧新津市および旧小須戸町が新潟市と合併して誕生した。人口は約77千人。都市に隣接した里山の豊かな自然環境を有し、鉄道や石油・花卉などの特色ある地場産業、交通網や文化施設などの充実した公共インフラを特徴としている。秋葉区自治協議会はこの合併時に組織された住民代表による区政及び市政の諮問機関であり、令和3年度に以下の2点を目的として「秋葉区民幸福度調査」を実施した。

 (1) 区民自らが「秋葉区に暮らす幸せ」とは何かを考え、地域の資源と強みを再評価すると共に、地域の魅力を内外に発信するための材料を得る
 (2) 地域の課題を明らかにし、新潟市政および秋葉区政に反映させると共に、秋葉区自治協議会の事業立案の参考にする

 調査は行政(秋葉区役所)と市民(区自治協議会)の協働プロジェクトとして行われ、同年度中には「特色ある区づくり予算」の編成や、次期新潟市総合計画(2023-2030)の策定に伴う「区ビジョンまちづくり計画」策定の基礎資料として活用された。
 また、調査結果を根拠とし、以下の7点を盛りんだ提言書を新潟市長および秋葉区長に提出した。

 1. 地域の特色を生かした産業振興と起業の促進
 2. 支え合いを実感できる仕組みの構築
 3. 子育て世代に選ばれる環境づくり
 4. 人にやさしい生活インフラの整備
 5. 文化芸術に親しむソフトの強化
 6. 災害に備えた行動を促す
 7. 幸福度を市の施策の共通目標に

 今後はより具体的な施策への市民の声の反映をめざし、議論および行動の根拠資料として活用していく。



(司会:高橋裕子)

石川三四郎の古代東洋史研究をめぐって 

貞清裕介(明星大学)

石川三四郎(1876-1956)の社会思想には、明治期、大正期、昭和初期の3つの時期において以下の特徴がみられる。明治期の石川は主にキリスト教社会主義者としての側面が多くみられ、平民社の社会主義系の新聞記者やキリスト教雑誌である『新紀元』の執筆者として活動していた。一方で、1920(大正9)年にヨーロッパとアフリカの亡命生活から帰国した後は、彼独自のデモクラシー論である「土民生活」思想に基づく無政府主義的な立場をとる論考が多く見受けられるようになる。また、石川は「土民生活」思想に基づいた生活実践として「共学社」を設立し社会運動も展開するようになった。そして、昭和初期の石川は東洋史研究に専念し、その成果として『東洋文化史百講』などを出版するに至った。
 本発表では、石川の東洋史研究に焦点を当てていく。石川は「東洋文化の歴史的存在」(『日本学術新聞』第80号、1940年2月25日)において津田左右吉(1873-1961)の東洋文化否定論を顕わにした『支那思想と日本』(1938年)の著書を取り上げている。そのため、本発表では石川と同時代に代表される歴史学者であった津田の東洋史研究と対比し、石川の東洋史研究の特徴を論じていきたい。



(司会:関未玲)

なぜ今、ディズニーは「母と娘」なのか:『リトル・マーメイド』の続編を中心に考える

清水友理(日本女子大学)

本発表では、ディズニーアニメにおける「母と娘」について考察する。近年のディズニーは、過去の作品で提示された価値観や表現を更新しようとする姿勢が顕著である。この流れにおいて興味深いのが「母と娘」に焦点を当てた作品が増えている点だ。たとえば『メリダとおそろしの森』(2011)や『わたし、ときどきレッサーパンダ』(2022)がそれである。また実写版の『シンデレラ』(2015)や『美女と野獣』(2017)でも、アニメ版になかった母親のエピソードが追加された。
 だが従来のディズニーアニメ、特にいわゆる「ディズニープリンセス」の登場する作品において「母と娘」が強調されることはあまりなく、それどころか過去のプリンセスの殆どは「母のない娘」として表象されてきた。ではこうしたコンテクストを持つディズニーアニメで「母と娘」が着目されることに、どのような意味があるのか。
 本発表では、その手がかりとして『リトル・マーメイド』(1989)の続編OVA『リトル・マーメイドⅡ』(2000)を取り上げる。特筆すべきなのは、本作の主人公がアリエルの娘であり、母になったヒロインと娘の関係が描かれる点だ。かつての母と対照的に人魚に憧れる娘の冒険は、娘による母の物語の再現であり、アリエルの再解釈そのものといえる。つまり本作は、今日のアップデートのプロトタイプ的な作品でもあるのだ。本作の検討を通して、ディズニーアニメにおける「母と娘」について新たな見解を付与したい。



【特別講演】

「生まれる前に死んだ子どもの行方 ― ドイツ民間伝承のフィールドから誕生死について考える」

嶋内博愛(武蔵大学)

「時宜にかなわず死んだ子ども」を当該社会がどのように取り扱うか。おもにドイツ語圏における今昔の事例を参考にしつつ、その意義について検討する。
 生命・いのちの選別をめぐっては、これまでさまざまな角度から、さまざまな検討がされてきた。ここでは、なかでも生命の始まりに関するものを扱う。生殖医療の進展とともに状況は複雑化したものの、その土台には、受精から出産へと至る生物学的な過程がつねにある。出産にこぎ着けるまでに、人為的なものやそうでないものも含め、「淘汰」が起こる。淘汰されてしまった生命に、当該社会は「いのち」をみるのか? 子どもを亡くした母や遺族たちはどのように喪失の悲しみを乗り越え、誰がどのように彼らに寄り添うのか?
 今日の墓地にはこうした子どもたち専用区画が設けられているところもある。しかしキリスト教の厳格な教義によると、未洗礼である彼らはけっして聖別された土地に埋葬されえず、墓地から排除された。キリスト教コミュニティのなかに居場所のない子どもたちを救済したのは「甦らせの儀礼」だった。




講演者紹介:
 武蔵大学人文学部ヨーロッパ文化学科教授。専門は民間伝承研究、ドイツ語圏文化研究、文化人類学。単著に 『「燃える人」伝承と西洋の死生観―フライブルク・ザーゲ資料の解析による』(言叢社、 2012)、共編著に『パリ・オペラ座とグランド・オペラ』(森話社、2022)、『文化の遠近法―エコ・イマジネールII』(言叢社、2017)、共著書に『人文学のレッスン―文学・芸術・歴史』(水声社、2022)、共訳書にフィリップ・パーカー『世界の交易ルート大図鑑―陸・海路を渡った人・物・文化の歴史』(柊風舎、2015)などがある。








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